STEP03.従業員を雇い受注規模を拡大

一人親方として独立し、安定して仕事が受けられるようになってくると、今度は自分一人の人手だけでは足りない状況になってきます。 もしも従業員を雇うことによってこなせる仕事の量を増やせれば、当然ながら利益も増えるでしょう。 誰しもが一人親方として独立しただけで満足するわけではなく、こういった事業規模の拡大を狙うはずです。 個人事業主である一人親方はそもそも従業員を雇うことができるのか。 また、雇うとしてその注意点はどんなものがあるのか、見ていきましょう。
一人親方でも従業員は雇える?

結論から言えば、一人親方であっても従業員を雇うことは可能です。 ただし、基本的に一人親方という個人事業主は単独で現場仕事をこなすことを前提としており、従業員を雇うにはいくつかの制限がかかります。 例えば、年間で100日以上労働者を働かせてしまうと、自分自身の労災保険への特別加入が認められなくなってしまいます。 従業員と雇用契約を結んだ場合も同様です。 これは、特別加入の条件に、「労働者を使用しない」ということが盛り込まれているからです。 労働者を雇って自らは現場に出ない、という親方に労災保険加入は認められない、ということでしょう。 もしも自らの労災保険も維持しながら従業員を雇いたいなら、相手も個人事業主として扱った上での年間100日以内、が条件となります。
雇用契約を結んだら
自らの労災保険加入は諦め、正式に雇用契約を結んだ上で従業員として雇うことももちろん可能です。 その場合は、従業員のための各種保険への加入手続きが必要になります。これは親方として人を雇う側の義務です。
- 雇用保険
- 労災保険
- 社会保険
- 厚生年金
ただし、社会保険および厚生年金への加入が必要になるのは、常時5人以上の従業員を雇っている場合に限ります。 また、雇用契約をしっかり結ぶことも不可欠です。 これは小規模な組織だと、その面倒さから省略されてしまうことが多いですが、雇用上のトラブルを未然に防ぐためにもしっかりと行う必要があります。 具体的には、労働条件の通知(給料や労働時間、休憩時間などに関する細かい規定)や、36協定の締結(時間外労働がある場合の規定)などです。 最近は会社と従業員との間で不当解雇や残業代未払い、といった問題での争いやトラブルが増えています。 雇用契約をしっかり結んでおくことで、これらの問題を未然に防ぐことができます。自分の組織を守るためを思えば、多少面倒でもやっておくべきでしょう。
家族を従業員として雇う
一人親方が、自らの家族を雇用することもできます。ただし、これは通常の雇用とは若干勝手が違ってきます。 まず、同居する家族は原則として従業員にはなれません。その時点でかなり条件は限られてきます。 また、雇われた家族は雇用保険、社会保険・厚生年金に加入できません。 労働者として保護される範囲は通常よりもかなり狭い、と言えます。 ただし、家族を雇うことは一人親方にとってメリットがあります。 家族従事者に給料として支払ったお金は経費として認められるため、最終的に家族単位で支払う税金を抑えることができるのです。 もちろん、形式上「雇ったことにしている」というのは、ただの脱税である不正です。 事務作業や経理などを家族に任せる、という形で仕事の分担ができるのであれば、家族を従業員として雇うことも選択肢に入れると良いでしょう。
法人化の目安

個人事業主である一人親方として続けるか、それとも法人化するか。 ある程度事業が拡大してきたところで決断を迫られることとなるでしょう。 法人化をした方がいい、とされる目安などはあるのでしょうか? 前提として、それ以上の事業拡大を望んでいるかどうか、ということがあります。 今以上に大きくはしたくない、と言うのであれば、わざわざ法人化する必要はないでしょう。 一人親方として仕事量の調整だけしていけばOKです。
事業拡大を望む場合、年間の所得が1000万円を超え、その状態がしばらくは続くことが明らかな場合、法人化を考えるべきでしょう。 1000万円という数字は、単に区切りがよくわかりやすいからだけではありません。 個人の所得税と法人税を比較した際に、1000万円を超えたときの所得税が、法人税率を明らかに上回ってしまうからです。 つまり多く税金を取られることになります。
また、1000万円の所得を得る状態ということは、当然ながら売上額はその数倍であり、消費税の額もかなりのものとなるはずです。 法人化をすることで新たに2年間消費税が免除されるため、残せるお金にかなりの違いが出ます。 これらを加味した上で検討すると、やはり所得が1000万円を超えた時点で法人化、という基準で考えることは間違っていないでしょう。