個人事業主として独立
建設業の職人は、大きく4つの段階に分けることができます。
- 見習い
- 職人
- 一人親方
- 親方
この中で言えば見習い~職人の段階は従業員、そして一人親方が個人事業主として独立した職人。 親方は法人化した社長、というイメージを持っていただいて構いません。 一番大きなターニングポイントは、従業員である立場から独立を果たす段階、つまり一人親方になるところでしょう。 ここでは、個人事業主(一人親方)として独立をすることによって変わることや、そのための準備、注意点などについて解説いたします。
独立のための準備
まず独立をする前に最低限しておくべき準備についてです。 従業員として働きながら平行して準備を進めることで、よりスムーズに独立後のスタートが切れます。
1つ目に、初期費用を用意することです。 仕事で使う道具や材料、作業車などはこの初期費用で用意しなければなりません。 これらを持たなければ、職人としての仕事はできないでしょう。 従業員のうちは会社や親方のものを使えましたが、独立すれば自分で用意しなければならないのです。 次にクレジットカードの契約です。 独立後のさまざまな支払いをクレジットカードに一本化することで、経費の管理などがしやすくなります。 また、なぜこれを準備段階でしておくべきかと言うと、独立後よりも従業員のうちの方が審査に通りやすいからです。 本人としてはステップアップしているつもりでも、独立したての社会的信用は低い、ということを覚えておきましょう。
独立後に必要な手続き
独立後にはさまざまな公的手続きを済ませる必要があります。
- 開業届を提出
- 青色申告承認申請書を提出
- 源泉所得税の納期の特例の承認届を提出
これらはすべて税務署に提出しなければならない書類です。 開業届を出すことで青色申告を利用できるようになり、②の申請書提出が有効となります。 個人事業主としてやっていく以上、白色申告に比べ青色申告は圧倒的にメリットが多いので、必ずこの手続きは済ませましょう。 また、③によって本来毎月納付しなければいけない源泉所得税の支払いサイクルを年2回にまとめることができます。 煩雑な振込手続きが減るので、この手続きを済ませておくこともおすすめします。
独立前に会社員として働いていた場合、社会保険・厚生年金に加入している場合がほとんどです。 会社を退職すると社会保険への加入資格を喪失しますので、国民健康保険および国民年金への切り替えが必要になります。 この切り替えは自動では行われないので、必ずご自身で行う必要があります。 手続きをしないと未納扱いとなってしまうので注意しましょう。
これは①の開業届とは別で、都道府県税事務所に提出する書類です。各自治体からの個人事業税や住民税に関わるものですが、提出をしなくても特に罰則などはありません。
保険について
労災保険には加入しましょう。これはもはや必須です。 本来労働者として扱われない個人事業主は労災保険に加入できないのですが、一人親方はその実態が労働者とほぼ変わらず、ケガへのリスクもあるので、特別加入が認められています。 また、大手ゼネコンが取り仕切る現場などの場合、労災保険への加入が現場立ち入りの条件になっていることも多いです。
労災保険に入っていない、という時点で仕事を回してもらえなくなることもある、ということです。 労災保険への加入は必須、そしてそれに加えて民間の保険も併せて加入しておくと万全です。 ケガや病気で働けなくなったときに収入を保険金で補うもの、工事現場での事故で発生した建物や資材への損害を補填するもの、などさまざまな種類があります。 ご自身に必要な保険を、社労士など専門家と相談しながら用意するのがベストでしょう。
その他用意するもの
独立開業後に用意するものとして、事業用の銀行口座が挙げられます。 開業届を税務署に提出しておくことにより、屋号名での銀行口座開設が可能となります。 個人名の銀行口座をそのまま独立後も事業用として併用する方もいますが、これはあまりおすすめできません。 理由は税務処理の煩雑化と、取引先からの信用です。個人名の口座を使っている時点で取引先から足元を見られてしまう可能性すらあります。
次に、名刺です。自分自身で営業をかけて、仕事を取ってこなければいけない一人親方として、名刺は必須アイテムです。 名刺を用意していない、または切らしている、といった人はそれだけで仕事もできないだろう、という邪推をされかねません。 初対面であいさつをする時のきっかけにもしやすいので、名刺は必ず用意しましょう。